ルドンの作品に登場する「目」について——
「僕自身、いつもルドンの(作品に描かれた)ああいうまなざしを見ると、何を見ているのかなと自分に問いただしているんだけど、たぶん僕は、これは記憶のまなざしではないかと思うんですよ。それは人類、人間がこの地上に生まれてきて最初に見た世界の風景とかですね、そういういわば生命の神秘というか。今、人類は知的に開発されてかなりのところまできているわけだけども、原始の記憶というか、モノがまだはっきり形をなさない時代の記憶を、僕たちはまだ持っているんだろうと思うんです。そういう何か目に見えないもの、しかしそれは世界を作っている非常に大きな、大事なもので、たぶんルドンという画家は常にその(作品に描かれた)まなざしを通して、そういうもんを見たかったんではないかと」
「僕も作曲家、つまり最初の聴き手としてね、ルドンと同じように、見えてないものを見たいし、今聴こえてない音をね、聴き出したい。音を組み合わせて音楽を作るっていうんじゃなくて、ふと何かある音を聴き出したいなっていう気持ちが強いです。ルドンを見ていると、非常にそういう気持ちにさせられる」
武満徹【私とルドン】(日曜美術館 1980年放送)より
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